プライベートな音楽との出会い
槙田 盤
発行年月: 20061020
掲載 : 京都芸術センター通信「明倫art」Vol.78 2006年11月号 音楽レビュー
発行元 : 京都芸術センター
プライベートな音楽との出会い 槙田 盤
『クラシック三段跳び コンサート「賢者の対話」』
2006年9月18日 京都芸術センター(京都市)(講堂)
「もっと大きなホールで大勢で演奏するオーケストラの音楽は、多くの人にわかりやすいし「公共」なものです。でも、ここで今から180人ほどで同じ時間を共有して演奏する室内楽の音楽は、プライベートな会話みたいなものだから、その内面的なやりとりを楽しんでください。ぼくたちが賢者かどうかはともかくね。」演奏前のプレ・レクチャーで、チェリストであり企画の中心となったヘーデンボルク・直樹は、おだやかに微笑しながら語った。その言葉どおり、コンサートは演奏家どうしが音でおしゃべりしているようであった。初秋の夕方、窓から入る日の光が明るくなったり薄暗くなったりする中で、穏やかな気持ちで、しかし緊張して演奏に引き込まれた。
ドヴォルザークのピアノ四重奏曲(第2番・変ホ長調)では、明倫小学校に伝えられてきたチェコ製のペトロフのピアノが、ウィーンで活躍するピアニスト(吉澤京子)によって演奏され、東京で活躍するヴァイオリン(川田知子)、東欧系のヴィオラ奏者(ラズヴァン・ポポヴィチ)らとともに、チェコの作曲家の音楽を若々しく響かせた。次のブラームスの弦楽六重奏曲(第1番・変ロ長調)では、ヴァイオリン、ヴィオラ、チェロ、2本ずつ6人がそれぞれ、メロディー、リズム、音色を、個性的に作り出しては手渡していくことによって、重厚な音楽の世界を構築していた(チェロに加わった遠藤真理の存在感には特に注目させられた)。
「三段跳び」とは、0歳から青少年を対象としてクラシック音楽と出会い、楽しむための3つの入り口(ワークショップ、マスタークラス(公開レッスン)、コンサート)がそれぞれ3つづつ、計9種類も用意された重層的な企画であった。楽器の音のあわせて動き踊ったり、少し年上の学生がレッスンされているのを見たりすることで、テレビや学校では体験できない音楽に出会ったであろう。ベビーカーが客席に並び、赤ん坊が泣きわめく会場で開催されたコンサートが終わって、「ひさしぶりに生でいい音楽を聴いたねー」と語り合うお母さんにとっても、この機会は貴重なものであったようだ。期間中、芸術センターは子どもたちが走り回り、弦楽器の音が響いていた。
まきた ばん/(株)シィー・ディー・アイ主任研究員、音楽学者
文化事業企画・調査・研究に携わる。
ガムランによる楽舞劇「桃太郎」(9月10日・甲賀市碧水ホール・マルガサリ・野村誠)は、国際的な文化交流と持続的な創造力によって到達された衝撃的にすばらしい公演であった。どこかで再演を、というより、成長した「桃太郎」を見ることはできないか。
槙田盤 MAKITA Van