びわ湖ホールは生きている!

槙田 盤

発行年月: 20070320
掲載  : 京都芸術センター通信「明倫art」Vol.83 2007年4月号 音楽レビュー
発行元 : 京都芸術センター


びわ湖ホールは生きている!  槙田 盤
びわ湖ホール青少年オペラ劇場 林光作曲「森は生きている」
2007年2月4日  びわ湖ホール 中ホール

 びわ湖ホールには、専属のオペラ歌手集団「声楽アンサンブル」がいる。定期的にコンサートを開催し、毎年秋のプロデュースオペラでは合唱パートとして活躍しているのだが、年に2つの演目を上演する青少年オペラ劇場では、ここのメンバーがソリストとなる。「森は生きている」の上演は、2000年、2003年に続いて3シーズン目で、びわ湖ホールの「レパートリー」となっている。ピアノ1台で伴奏する原曲を室内オーケストラ編成とし、ホールの舞台機構をフルに活用した本格的なオペラ劇場公演であった(指揮:沼尻竜典/演出:中村敬一)。
 パンフレットには歌詞と楽譜が2曲印刷されていて、その部分を開演前に練習して、みんなで歌う趣向であった。しかし、もっとも印象深く残ったメロディーは、その2曲のどちらでもなく、最初と最後にだけ歌われる主題歌ともいうべき曲であった。すべてがあるがままの状態に戻り、12人全員が小さな声で「森は生きている」と歌いだす。「シドレーレシドラソ」=「モリハーイキテイル」。この言葉、この8音からなるメロディーが、思い出しては口ずさむことのできる宝物になった。
 また次に「森は生きている」を公演するときに必ず来よう。ほかの公演に足を運べば、顔や声を見知ったメンバーが出てくるのを楽しみだ。特徴的なホールの屋根を電車から見るだけで、ここで体験した喜びを思い出すであろう。そう思えるだけで、なんて幸せなことなのであろうか。ホールがすぐれた人材を備え、得意とするソフトウェアを育てていて、それを楽しみに観客が集まるという劇場文化が出現しているのである。確かに「森は生きている」と思った。そして、びわ湖ホールそのものが「生きている」のだと実感した。
 25歳未満の「青少年」は1,500円と破格の値段であるのに、客席にはティーンエイジャーは少なく、むしろ親につれられた小学生が多くいた。一般でも3,000円と格安なのだから「もと青少年」も大挙して押し掛けよう。大人が楽しんでいる様子を見せれば、それが新たな観客を育てる力となるであろう。開演前に観客がステージにあがって見学できるという企画もすばらしい。


まきた ばん/(株)シィー・ディー・アイ主任研究員、音楽学者
文化事業企画・調査・研究に携わる。びわ湖ホールのもうひとつの楽しみは、琵琶湖岸から広がる景色だ。この日は比良山系がうっすらと白く見えた。琵琶湖水系に生きる私たちの「森」とは何なのだろうか。


槙田盤 MAKITA Van