ホールでの緊張と自由、幕間文化の充実

槙田 盤

発行年月: 20081120
掲載  : 京都芸術センター通信「明倫art」Vol.103 2008年12月号 音楽レビュ−
発行元 : 京都芸術センター


ホールでの緊張と自由、幕間文化の充実
「ミュージック・フリー」(<京都文化祭典’08>京都の秋 音楽祭)
2008年10月26日 京都コンサートホール大ホール

 今年で4回目となる「ミュージック・フリー」とは、秋の日曜日の午後、京都コンサートホールにおいて、京都市交響楽団をはじめとする多彩な演奏家が次々と登場するコンサートである。6時間5ステージ29曲もの長丁場であるのに、大ホールは満員、3千円(1ドリンク付/高校生以下千5百円)の格安料金からは想像できぬ充実ぶりであった。
 最初は、ショスタコーヴィチの交響曲7番、チチンプイプイと歌うCMで有名になった曲を、指揮・井上道義と、京都市交響楽団・京都市ジュニアオーケストラが混在した100名以上の奏者が響かせた。ジュニアのメンバーと、その横に座り譜めくりをも担当する京響メンバーとは、いわば師弟共演となるが、だからこそであろうか、フレッシュさと辣腕が共存する名演であった。ショスタコ連続演奏会を成功させている井上の牽引力も強いのだろうが、とてもジュニアが混じっているとは思えない。京響は、最後のステージでも「展覧会の絵」をメリハリきつく演奏し気炎を上げた。
 仲道郁代(ピアノ)によってラフマニノフとショパンの名曲小品が次々と演奏されるステージでは、この日もっとも「自由」を感じた。演奏後にハロウィンのカボチャをかぶって客席から登場した「パンプキン」井上との対話でもかいま見られたが、小さな手、国や時代の違い、そのほかすべての条件をみずからに受け入れ、作品と真剣に対峙した結果、独自な世界を生み出すことに成功している。
 松原晴美(オルガン)のステージは、ホールの巨大パイプオルガンの魅力を十分に聴かせるものであった。また、ピタゴラスイッチのテーマ曲で有名な「栗コーダーカルテット」によるステージでは、リコーダー(縦笛)だけでなく様々な楽器を自由に使いこなして、独自の脱力系な世界を展開した。願わくば、各ステージをつなぐホスト役がいて、各演奏者と話をしたり、客席からの質問をとりもったりすれば、それぞれの音楽への関心が、より幅広く深く育つのではないか。
 ゆっくりとられた休憩時間には、ビールを飲みながら知人を見つけてだらだら話をしたり、京都府立大学下鴨農場の柿の木がたわわに実って雨に濡れるのをぼんやりながめたりできた。ステージ上での舞台転換を見て、次のステージの奏者が音を出すのを聴くのも、ホールでの密かな楽しみである。演奏そのものだけでなく、そのまわりに心地よい環境があり、「幕間文化」が成立しているのもうれしい限りだ。ホワイエだけでなく小ホールや入り口周辺、さらには府立資料館や植物園とも連携して、サブステージを作ったり、連携した企画展示をしたり、食べ物の屋台やフリーマーケットなどを同時開催してはどうだろうか。

まきた ばん/大学職員、音楽学者
10月11日、円山公園音楽堂(野外)でのフォークコンサート「京の旅人」も今年で4年目、2500人満員が約4時間で8組31曲休憩なし。わたしは若い部類だった。だけど「僕たち若者がいる」とみんなで歌うすがすがしさよ。


槙田盤 MAKITA Van