「のだめ」に描かれた音楽による出会いと成長
槙田盤
発行年月:20090520
掲載 :京都芸術センター通信「明倫art」Vol.109 2009年6月号音楽レビュ−
発行元 :京都芸術センター
「のだめ」に描かれた音楽による出会いと成長
クラシック・マンガ・コンサート「のだめのためのプチコンサート」
京都国際マンガミュージアム 2009年4月11日
二ノ宮知子の『のだめカンタービレ』は、2001年から「Kiss」に連載された少
女マンガで、2006年テレビドラマで話題となり、昨今のクラシック音楽ブームの
牽引役ともされている。このコンサートは、「音楽とマンガ」をテーマとした京
都マンガフェスタの一環としておこなわれたもので、担当編集者である三河かお
りによる制作の裏話と、テレビドラマで「のだめ」の演奏を弾いたピアニスト三
輪郁による演奏で進められた。
三河によると、作者の二ノ宮は、その時々に関心のあるテーマをコミックマン
ガとしてきたが、ちらかった下宿でグランドピアノを練習する音楽大学生「のだ
め」こと野田恵を主軸とする青春グラフィティとして『のだめカンタービレ』を
書き始めたところ、どんどんクラシック音楽にのめり込み、それにともなって音
楽そのものに向き合うストーリーになっていったという。三輪が最初に弾いた
ベートーヴェンのソナタ「悲愴」第2楽章など、ストーリーの中で演奏される曲
はすべて、二ノ宮自身がクラシック音楽を好きになっていく過程を追ったものの
ようだ。それぞれの曲に向き合う中で演奏家の成長をうまく表現されていること
が、大ヒットする要因だったのであろう。
三輪が弾いたのは、京都国際マンガミュージアム(旧龍池小学校)のグロトリ
アン Grotrian Steinweg のグランドビアノであった。少し乾いた個性的な響き
の楽器であるので、2曲目のドビュッシー「喜びの島」は弾きにくそうであった
が、3曲目にモーツァルトのキラキラ星変奏曲や、アンコールとして弾かれた同
じくモーツァルトのトルコ行進曲などでは、現代のピアノにはない魅力にあふれ
ていた。
コーディネート役であった吉村和真(ミュージアム研究統括室長)は、スポー
ツマンガであれば勝ち負けがはっきり決まるが、音楽マンガは優劣がわかりにく
くストーリー展開が難しいと指摘した。しかし、のちに「のだめ」がパリへ留学
したのは、二ノ宮がフランス音楽に傾倒していったのにあわせてのことらしく、
それが読者としても納得できるストーリー展開となっているのは、三河のプロ
デュースが成功しているからであろう。しかしそもそも演奏家は、自分に似合
う、自分が表現したい曲とどこで出会い、何をだれから学び、どうやって自らの
ものとしているのであろうか。このことは、音楽家のみならず、広く人間の生き
様として重要なテーマであろう。三輪のウィーン留学関連の友人である稲森奈津
子が加わり、プッチーニのオペラ「ジャンニ・スキッキ」から「私の愛するお父
様」と武満徹「小さな空」を歌った中にも、日本人がクラシック音楽に向き合
い、今ここで表現している素晴らしさにあふれていた。
まきた ばん/大学職員、音楽学者
細川周平『遠くにありてつくるもの』の読売文学賞受賞を祝う会が4月12日に
ライブハウス「モダンタイムス」で開催された。その主題である日本人のブラジ
ル移民にちなんで、ボサノバ、ルンバ、新内、童謡など、多種多彩なミュージ
シャンによるライブパーティーであった。音楽における研究と実践の幸せな出会い。
槙田盤MAKITAVan